シャモニクラブ 山行記録

甲斐駒ヶ岳・尾白川本谷遡行(月例山行)

     

日程:2012年8月5日〜8月7日

参加者:笹川(リーダー、写真(無印))、有村(写真(A))、柴崎、小野(報告、写真(O))

行程:8月5日 尾白の森キャンプ場−(横手)駒ヶ岳神社−尾白川林道ゲート前駐車場(5:43)−入渓点(7:10)−女夫の滝−鞍掛沢−ワイヤー滝−噴水滝−黄蓮谷出合−8mナメ滝−1800m地点ビバーク地(15:40)

8月6日 ビバーク地(5:43)−スラブ帯-巨大チョックストーン?(胎内くぐり)−30m大滝−二股−六合目岩小屋(16:10)

8月7日 出発(6:50)−駒ヶ岳(8:50着9:10発)−七条小屋−五合目小屋跡−笹の平−横手駒ヶ岳神社(16:40)

「日本アルプスで一番代表的なピラミッドは、と問われたら、私は真っ先にこの駒ヶ岳をあげよう。南アルプスの巨峰群が重畳している中に、この端正な三角錐はその仲間から少し離れて、はなはだ個性的な姿勢で立っている。まさしく毅然という形容に値する威と品をそなえた山容である。」と深田久弥は言っている。

いろいろな登り方がルートや季節によってあるが、今回私たちは、尾白川本谷を遡行し、稜線に出て、駒ヶ岳に登り、黒戸尾根を下降することにした。

8月4日

2台の車で首都圏を出て(笹川、小野、柴崎は柴崎車で川崎8時)、尾白の森キャンプ場に泊まる予定で目的地についたら(23時30分)、すでにゲートが閉まっており、シャットアウト。キャンプ場の外でテント一張りと車内で睡眠。有村はキャンプ場近くの白州道の駅で車内泊。

8/4 不時露営(O)8/5 林道ゲート、車止め

8月5日

早朝に有村と合流。有村車を黒戸尾根の登山口近くの横手駒ヶ岳神社の駐車場に置き、柴崎車で林道ゲート前駐車場(ここは日向山登山口)まで行き、ここに車を置いて入渓点まで林道をたどる。トンネルを三つくぐると間もなく林道は行き止まりになり、左手の急旬な踏み跡をフィックスロープを頼りに下ると間もなく入渓点である。二つ目のトンネルはかなり崩壊していた。

8/5 入渓点への道(A)8/5 同

支度を整えて川原歩きをするとまもなく淵が現れ、綺麗な水流と滝が現れる。いきなり泳ぎかと緊張させられる深い淵をもった滝(女夫の滝か)である。右岸をへつって滝の左側を越す。小滝を超え、鞍掛沢をまたぐと、今度は真ん中にワイヤーを張った滝が現れる。これは笹川が一度は水につかったが、果敢に右側から攻めて水流を左に渡りロープを固定し、後続を一人づつ確保する。それでも後続の3人はいずれも水流の勢いと滑りやすいスラブに足をとられ、激流に飲まれそうになるという手荒い洗礼を受けた。

淵のある滝

淵のある滝(O)同(O)

ワイアのかかった滝を登る準備一休み(A)

続いて噴水滝である。水流が増えると落ち口から噴水のように水を噴き上げるらしい。綺麗なナメ滝が連続する。黄蓮谷を左に分けて、さらに進むと8mのなめ滝が現れる。これも見応えがある。

終始リードする笹川も一息(A)噴水の滝

噴水の滝を越えて

淵のある滝尾白川本谷の百合

12時過ぎ傾斜がきつくなってきた

 15時を過ぎるとねぐらが気になる。落石と水流を気にしないでツェルトが張れる、しかもたき火ができる適地を今夜のビバーク地と決めた。それぞれ持参した1~2人用のツェルトを4つ張り、たき火や夕食の準備をする。
 笹川持参のウイスキーを飲みながら、またそれぞれの夕食を食べながら、今日は直登せずに高巻した滝は一つだったが、明日はもっと厳しいだろうなどと歓談。

ビバークの準備(A)ビバークサイトから越し方を振り返る(O)

たき火準備OK(A)

8月6日

 朝食を済ませ、ツェルトを撤収し、5時43分に出発。偶然昨日と同じだ。今日は雲行きがややおかしい。ここから先は大岩が積み重なるような渓相が続く。 右側の烏帽子中尾根側は200m近い垂壁が続き、左側坊主岩側は傾斜50~60度の一枚岩が続く。このころから霧が雨になり、この後、雨脚が強くなったり止んだりが続き、いやな気分になる。水流はだんだん濁ってくる。

 間もなく崩壊した大岩の乗った滝を過ぎると、今度はチムニーというには広すぎる岩盤の割れ目の上に巨岩の乗った(一般的に巨大チョックストーンと呼ばれている?)このルートの核心でもある滝が現れる。 殆ど手がかりもなく、しかもぬめっており見るからに手強そうである。 強い水流の左側に残置のスリング、カラビナが見える。笹川がアブミ一台をセットし、空身でここをクリアする。続いて柴崎がトライしたが、最後の右への抜けのワンステップで力尽きて落ちる。柴崎と交代した小野は腕力とアクロバチックな態勢で何とか越えた。その後全員のザックを荷揚げし、柴崎、有村は、易しそうに見える右側の壁からトライしここを難なく登り、胎内をくぐって最初の難所を抜けた。

8/6 雨模様の中、2日目の出発巨石が重なる滝

胎内くぐり

胎内くぐり2ガレを詰める

 ここから先は、30m大滝や、小滝が続く連瀑帯は左岸を高巻くが、明確な踏み跡が見つけにくく、最初の巻道は極めてもろい、しかも雨を吸ってより不安定な急斜面を登るリスクの高いルートとなった。この登り口(2m)で小野が浮石を掴み、大小の岩が点在する斜面を20mほど転落した。幸い大けがにならず、柴崎が、常備していた薬、ガーゼ、テープなどで応急措置を行い事なきを得た。このルートは危険と判断し、別なルートを探すも見つからず、結局最初とりついたルートを登ることにした。 ランニングビレイが取れないため、笹川がフリーでこの危険なぐずぐずの壁を突破しロープ2本をつなぎ合わせてセットする。後続はこのロープにそれぞれセルフをとりながら登り、2番目の難所をどうにか通過した。

 連瀑帯の通過も高巻きとなり、ルート発見に手間取ったが無事通過して二俣にたどりついた。二俣を左にとってガレを詰めていくが、最後の樹林帯への抜けが崩落していてとても越えられそうにない。そこで左から入り込んでいるガレを詰めて行くと樹林帯に入り、踏み跡を辿っていくと最後は倒木と20分ほどの藪漕ぎを経てやっと稜線にでた。六合目岩小屋を探すのにやや右往左往したが、明るいうちに到着でき、笹川、有村が水源まで水汲みに行っているあいだ、小野は柴崎に傷の手当をしてもらう。今宵はこの無人小屋を4人で独占である。

六号目岩小屋前

8月7日

 上天気である。朝食をすまして、縦走の支度をして、出かけたのは6時50分頃か。  まだ森林限界を超えていないせいか、登山道の両側の低木の朝露で、ズボンが雨に打たれたように濡れた。三ツ頭から駒ヶ岳への稜線も高度があがるにつれて岩塊が増えてくる、何か所か鎖場や梯子を通過する。 駒ヶ岳の頂上には、7時40分ごろ到着。ここまでは沢で下降中の一パーティ二人にあっただけだったが、ここは、北沢峠などから登ってきた登山者たちが大勢いてにぎやかに談笑している。  晴れてはいるが雲が広がってしまって四囲の景色を楽しむことはできなかったが、写真などをとって、いよいよ長ーい黒戸尾根の下りが始まる。

8/7 岩小屋から中央アルプス(O)稜線から鋸岳方面

大岩が重なる稜線8:50甲斐駒頂上

頂上(O)下山路を望む

 最初に現れるのは、七条小屋である。小屋には誰もいない(下山時、黒戸尾根で合ったボッカさんが小屋番かも)。小休止して水の補給などして出発だ。五合目で、お昼にすべくガスに火をつけたら、あたりが急に暗くなり雨の心配をしたが大丈夫だった。それぞれ軽くお昼をとり、笹の平(二股、横手駒ヶ岳神社と竹宇駒ヶ岳神社への分かれ道)で休んで、疲れ果てたからだを引きずって(少し大げさか)有村車の待つ、神社に4時半ごろに到着。 黒戸尾根もきついことでつとに知られているので、あまり登ってくる登山者にはあわなかったが、トレイルランをする人が3人もいたのには驚いた。

頂上を振り返る黒戸尾根終了点

笹川感想

思いの他スケールが大きく、人の手が入っていない沢であった。
高巻きを示す赤布などは皆無で、僅かにしかない残置のピトンもぐらついていた。 下部の素晴らしい景観と穏やかな渓相とは対照的に、荒々しい上部を持ち沢の様々な面を見せてくれる。登攀そのものは大した箇所は無いが、風化して脆くなった花崗岩や、土に花崗岩のブロックが含まれ触れば落ちる落石危険箇所があり、フリークライミングの能力よりも本チャンの経験が試される。ルートファインディング能力は高いレベルを要求されるルートだと思う.


2日目の上部高巻きでは雨で只でさえ脆い部分が非常に悪い状態となったが何とか超えられ、稜線に近づいた頃には雷も聞こえたが稜線に抜けた頃には天気が回復し無事山行を終える事が出来た。
体力的にもハードな山行となったが、今後の為に良い経験が積めた。 ルート判断や時間の区切り、撤退か前進かの状況判断など難しい判断を求められる事があったが、結果としては3日ともオンタイムで終える事が出来たので、概ね間違ってはいなかったと思いたい。

有村感想

 今回の山行はただ一言「疲れた。ほとんど限界に近いぐらい疲れた。」である。歳のせいもあるかも知れないが、若い時であっても多分かなり消耗したと思う。 尾白川本谷はネットの先人の記録をいくつか下調べはしていたが、想像していた以上のスケールの大きさで、あらためて南アルプスの奥深さを感じさせられた。

二日目は雨の中、沢筋から離れての危険な高巻きの連続で疲労しやや不満は残ったが、それでも初日は好天に恵まれ、長大な花崗岩のスラブを流れ落ちるなめや滝、また何か魔物が住みついていそうなエメラルドグリーンに輝く神秘的な深い渕に魅了され、あらためて自然の造形物に畏敬の念を抱いた山行であった。 また、自分の登山史の中でも強く印象に残る山行になりそうである。



柴崎感想

お三方には、大変お世話になり、ありがとうございました。
行程の記録をとり損ねてしまったことと岩小屋の周りが汚なかったことが気がかりで、リベンジばかり考えている今日この頃です。
この度の山行で第一優先しまのは、長い行程を乗りきり、メンバーにご迷惑をかけないための、軽量化でした。ザックが水に浸かったことを想定した時、ザックに水が含む部分が少ないこと、そして乾きが早いこと。(神保町に3度出向き、悩みに悩んで防水性のあるものを新調しました。)ハーネスもしかりです。環付カラビナも軽量化。
ツエルトの底なしに対応させるため、シュラフマットでなく、大きさのある銀マットをチョイス。 水に浸かったあとの寒さにも対応すべくダウンの上下。夜はダウンにシュラフカバー。靴も夏用の軽量な物を新調。ザックの中身も浸水による加重を防ぐため、用途別に全て防水のスタッフバックに詰めました。なので?ごめんなさい。記録用の防水カメラまでは・・・。
全てリードをして下さった笹川さんは大変なご苦労だったかと思いますが、自分は達成感のある沢上りでした。 初日は、美しい沢を満喫。2日めは、塩っぱい高捲きを強いられました。(湯俣から北鎌を目指したときも散々高捲き、藪こぎをしたのて、あまり苦にはならなかったけれど、湯俣からの高捲ルートにはほとんど目印があった) 塩っぱすぎだだけに、他のルートや方法があったかもと悔やまれます。
笹川さんからご指摘があったロープワーク等の訓練の件ですが、山行の前に一度顔合わせをして、ルートの確認や必要だろう手技の確認をすればよかったですね。未熟で申し訳ありません。
下山時は、虫刺されが腫れて靴にあたり、痛くてヘロヘロでしたが、尾白川本谷から甲斐駒ヶ岳の山頂を踏み無事 下山でき感謝・感激です。皆様 ありがとうございました。 ドーピング!?帰宅後顔に20ヵ所以上の虫刺されを確認。膝から下のむくみが取れず、腎保護目的にステロイドを服用。庭掃除も手伝って、やっとくるぶし出現です。

小野感想

 甲斐駒は積雪期に堀田教室で甲斐駒・仙丈連続登山をして以来だから20数年ぶりである。

今回は尾白川本谷を詰めて、頂きにたったあと、黒戸尾根を下ろうという2泊3日の計画である。甲斐駒がでっかい山である事はわかっていたが、今回初めてその懐の広さを実感した。日曜朝の遡行開始だったせいか、最近こちらからの入山者がへっているのか、入渓点から2番目の宿泊地の6合目岩小屋(昭文社の山と高原地図では6合目石室)につくまで我々4人のほか、たった一パーティ2人にしか合わなかった。

尾白川本谷は素晴らしい沢である。ただし、ビバーク地点を過ぎてからは、今回雨のせいもあるが、なかなか定かな高巻のルートが探しにくく、有っても途中で途切れたりして、他のパーティの試行錯誤のあとがみて取れる。今回、やや集中力を欠いて、スリップして斜面を転がり落ちるという失態をやらかしたが骨折等の大事にいたらず、柴崎さんの応急措置でその後の行程を予定どおり消化できたのはラッキーだった。3日間とも早朝から、16時〜17時までの行動で疲れました。でもそれ以上に楽しく印象に残る山行でした。

いつも、高巻では緊張させられる事が多いが、今回は久しぶりなこともあるがことさら緊張を強いられた。高巻については有村さんの経験に負うところが大きかったし、笹川さんのガンバリや、柴崎さんの粘り強さに感心しました。この報告は拙稿に有村さん、笹川さんの推敲を加えて完成しました。

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